地震から見る国際関係

シリアとトルコ対応格差

 『(CNN)トルコ南部とシリア北西部を襲った大地震シリアのアサド大統領は10日、一部の被災地を視察し、人道支援物資の提供などが少ない西側諸国を非難した。シリアの国営メディアが報じた。

 今月6日の地震発生後、同大統領の発言がテレビ放送で伝えられたのは初めて。国営シリア・アラブ通信(SANA)が載せた画像によると、大統領とアスマ夫人は複数の被災地を訪ね、北部アレッポの病院では生存者を見舞った。

 地震で崩壊した建物の近くでは記者団を前に、西側諸国は「人道状況への敬意が全くない」と批判。米国と欧州連合(EU)がシリアに科す制裁策の影響で支援供与が乏しく、救助装備品の到着が妨げられているとのシリア政府当局者らの声明に沿った主張を展開した。

 米政府シリアへの制裁では人道支援努力は対象外と指摘。財務省は10日、地震発生を受けた救援努力に絡む全ての手続きを180日間にわたって承認するとの措置も打ち出した。

 SANAによると、シリア外務省は「人間への思いやりへの虚偽の印象づけ」を狙った措置と切り捨ててもいた。 シリアではアサド政権と反政府勢力の内戦状態が長年続き、このしわ寄せで緊急支援物資流入が滞ってもいる。

 シリアのメクダド外相は援助物資の受け入れは全て政府経由で処理するとも主張している。 反政府勢力が支配する被災地は国連を含む援助団体の助力に頼るしかなく、届けられる量も極めて少ない窮境にある。

 多数の諸国や国際団体が迅速に援助物資を引き渡しているトルコとは天と地ほどの差が出ている。』  

 東日本大震災以上の被災者数を更新したトルコ・シリア地震。  こんなに大災害になるとは・・・。

 さて、今回の地震トルコへは各国の救援隊が活動援助物資支援も続々と出ている。

 一方のシリア。 こちらはトルコに比べ、日本ではあまり話題になっていない。 被災者数がトルコの方が大きいという理由もあるだろうが、シリアの被害も相当なものだ。

 これを批判したのがシリアのアサド大統領。 確かに言っていることは正論だと思うが、アサド大統領反政府勢力を爆撃してきた張本人だ。

 シリア内戦で、アサド大統領ロシアの支援を受けながら多くのシリア人を殺してきたのだ。シリア難民を多く発生させてきたのも事実。

 大量殺人を犯してきた人間が人の命の大切さを説いても説得力はない。

 人道支援については経済制裁をしているアメリもすると言っている。緊急援助は人道的に必要というのはどの国でも反対しないだろう。

 ただ、現実的に西側諸国シリアには援助しづらいのは事実だ。

 シリアのメクダド外相援助物資の受け入れは全て政府経由で処理すると主張しているらしい。

 緊急援助でよくあることが、本当に必要な地域に物資が届かないということがある。 今回も殺人を犯してきたシリア政府を通さないといけないというのは、横流しの懸念が大いにある。

 シリアの反政府地域には物資を届けず、どさくさに紛れて援助品を自分たちの資金にする可能性も高い。善意の行為が新たな殺人に間接的に寄与する可能性だってあるのだ。

 だからこそ、西側諸国としてはシリア政府を通さず、国際援助組織やNGOなどを通して援助したいということだろう。

 それでも反政府地域への援助であれば、現地までの道に検閲などを設けて迅速な運送を妨害するかもしれない。 戦争をしてきた国を援助するというのは、多くのハードルが待ち構えているのだ。

 本来ならアサド大統領を支援しているロシアやイランに頼りたいところだろうが、ロシアウクライナ侵攻による経済制裁シリア援助まで手が回らないだろう。

 もう1つの友好国イランアメリカから経済制裁を受けている状況。

 しかもイランではへジャブのかぶり方で起きた死亡事件で、イラン政府イラン国民からデモを起こされて内政問題に注意している。

 その事件は西側諸国人権問題としてイランを批判する材料になっている。

 つまり、シリアの友好国であるロシアイランは両国とも、シリア援助に力を入れられる状況ではないので、何とか西側諸国から援助を引き出したくてこういうニュースになったのだろう。

 トルコとシリアの援助の格差は、国際政治力の格差ともいえる。 普段から仲良くしている国と敵対している国との対応に差が出るのは当たり前のことだからね。

 シリアのアサド政権アメリカ、ドイツ、フランスなど西側諸国からは敵とみられているので、緊急援助とは言え、ここまでトルコと差が出るのだ。そういう意味では人災という面もあるかもね。

 可哀そうなのはシリアの被災者。 それでなくても内戦で疲弊しているところに今回の大地震。 生き残ったシリアの人達地震で建物がここまで崩壊すれば、難民にならざるをえないだろう。

 西側諸国にとっては、新たなシリア難民問題が出てきそうだ。隣国トルコは被災もしているしね。

 ただ、西側諸国ロシアのウクライナ侵攻で自国のエネルギー問題ウクライナ支援に加えて、新たな問題が沸き上がったことになる。

 ロシアに輸送船の黒海の通行に関して仲介して働きかけてきたトルコのエルドアン大統領も当面は地震の対応に追われるだろう。

 ロシア、ウクライナ問題ばかりに構っていられない状況になった。

 この地震は現在の国際情勢から、いつも以上に援助が厳しくなりそうだね。