企業と地政学
売却額は約224億円の予定という。
キリンは、2021年2月の国軍によるクーデターを受け、今年2月にミャンマーからの撤退を発表し、MBL株の売却先を探していた。
当初は第三者への株の売却を模索し、複数の企業から打診があったという。だが、売却にはミャンマー政府の承認が必要で、交渉に時間がかかることが予想されることから、早期に解決するためMBL側に売却することにしたという。
出資する別の現地企業についても、同様の方法で保有株を手放す。いずれも売却時期は未定だが、「可能な限り、速やかに決着させたい」としている。
ただ、クーデター発生により、国軍系企業との協業に人権上の批判が強まり、撤退を決断した。
21世紀、 海外に進出した企業は、最初は中国がターゲット。人件費も安く、日本との距離も近い。かつて中国は「世界の工場」と言われていた。
しかし、中国も経済発展を遂げ、人件費が向上してメリットがなくなった。それに反日の潜在リスクを抱えている。
中国や韓国という国は、一度政治問題などで関係がこじれると、反日運動をする国だ。 そうなると、企業努力だけではどうしようもないリスクを負うことになる。
いわゆるカントリーリスクと言われるものだ。 日本企業も、今では中国のお隣のベトナムに進出している企業が多くなっている。
もちろん中国は市場という面もあるから、全部撤退にはならないだろうが、企業としてはリスクは最小限に抑えたい。 最近、地政学という言葉をよく耳にする。
簡単言えば、「国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する学問」で、国土の位置などはどうしようもないから、その地理的条件でどのようなメリットやリスクがあるのかを考えていくということ。
地理的状況は変えられないから、それを踏まえて自国をどのように守っていくかが国際政治でも重要になってきたということだ。 ミャンマーもそう。
人権侵害などで世界から非難を浴びているミャンマー軍。その軍が運営する企業との合弁となると、キリンにとってもダメージが大きいと判断したんだろう。
つまり、人権侵害を疑われる地域政府や企業と付き合っていると、販売や企業イメージに悪影響が出てくるようになっている。
ちなみに、中国政府は人権問題で叩かれている方だから、そういう制約は一切ない。独裁者と手を組んで、自国の利益だけを考える傾向がある。
かつてのミャンマー軍の軍事政権の時と同じく、政治体制には口を出さず、経済的な利益を取っていくだろう。
もっと広い視点で経済的なことを言えば、ミャンマーと仲良くなっておくと、中国は陸路経由でインド洋に出ることが可能になるかもしれない。
こういう企業撤退のニュースも地政学を見ていくと、どこに進出していくべきかよくわかるね。 余談だが、サハリンの天然ガスで三井物産、三菱商事など日本企業も出資しているのに、ロシアのプーチンは勝手にロシアの企業に譲渡すると言い出した。
要するにならず者国家と付き合っていると、契約など関係なく国営にしたり、自分達だけ利益を得るような手段を平気でとるのだ。
サハリン2も北方領土問題が進んでいないにもかかわらず、先に経済協力を決めた当時の日本の政治家の責任もあるだろう。
確かにサハリンだと日本から近いし、輸送コストなどメリットも大きかった。 サハリン2は日本の重要プロジェクトで政府が何らかの形で関わっていただろうけど、政治力で解決できない日本の政治にも問題があるかもしれない。
北方問題は棚上げされたままで、ロシアから要請された経済協力でお金を搾取されているのは交渉相手の本性を見抜けなかったということか?