スペイン語学習でベネズエラ支援に貢献:NPO法人の取り組み#国際協力

スペイン語学習が貧困対策に

スペイン語を学ぶことが国際協力に! 途上国を専門とする非営利メディア「ganas」(運営:NPO法人開発メディア)は、国民の4分の1近くが国を出るなど、深刻な経済危機が続くベネズエラの人たちからオンラインでスペイン語を学ぶ『命のスペイン語レッスン』の12期生の募集をスタートしました。

   4年前に立ち上げて以来、受講者の数は延べ806人。ベネズエラ人講師らが努力してスキルアップしてきた結果、「レッスンの質もお値段以上」と好評を得ています。

 国民の95%以上が「貧困」に、4分の1近くが「難民」になってしまった国があります。南米のベネズエラです。 ベネズエラでは経済が崩壊し、世界最悪のインフレがおよそ10年にわたって続いています。

 不運な境遇に生まれてしまったベネズエラの人たちを少しでも助けようと、途上国・国際協力に特化した非営利メディアの「ganas」(運営:NPO法人開発メディア)が4年前に立ち上げたwin-winのプログラムが、経済崩壊で生活苦に陥るベネズエラから学ぶ『命のスペイン語レッスン』です。

 12期生の募集をこのほどスタートします。 12期の受講期間は2024年5月8日~10月31日のおよそ半年。ベネズエラ国内にとどまるベネズエラからオンラインでスペイン語を学びます。

 レッスンはマンツーマンですので、スペイン語の初心者から上級者まで、ご自身のレベルにあったレッスンを受けられます。

 ベネズエラ人講師が一生懸命にスキルアップしてきた結果、過去4年の受講者は累計806人。「レッスンの質はお値段以上。同じようなレッスンを日本で受けたら10倍はすると思う」と好評を得ています。

 『命のスペイン語レッスン』では、スペイン語を勉強できるだけではありません。 大きな特徴のひとつは、受講者の皆さまからいただくレッスン料の大半をベネズエラへ送金することです。

 と言ってもクラウドファンディングや寄付といった一過性の支援ではありません。
スペイン語講師」の仕事をきっちりしてもらい(すべての講師はスペイン語の教え方の訓練を受けています)、その報酬として毎月払うのがミソです。 おかげさまで2020年5月以来、『命のスペイン語レッスン』は4年にわたってノンストップで継続でき、頑張るベネズエラたちの生活を支えてきました。努力は報われる――そんなことを伝えられる“新しい国際協力のカタチ”となっています。

 ■ベネズエラの難民はシリアより多い ベネズエラの経済はいま、どうなっているのでしょうか。

 その国の経済規模を表す国内総生産GDP)をみると、ベネズエラGDPはわずか3年(2017~20年)でなんと半減しました。1人当たりに換算すると、驚くことに60年以上前(1960年ごろ)の水準に戻ってしまったのです。

 ハイパーインフレがおよそ10年前に始まってから、ベネズエラの通貨ボリーバルの価値は99%失われたといわれます。また数回にわたるデノミネーションでゼロをいくつとったのかわからないほど。

 こうした状況を想像しやすいように日本円にあてはめてざっくり説明すると、400万円だった年収が4万円に、100万円あった貯金が1万円に激減したということです。ありえないことが続いているのがベネズエラなのです。

 経済が崩壊して以来、ベネズエラ国民の4分の1近く(約772万人)が難民として国外へ逃れました。520万人といわれるシリア難民の数を上回ります。

 国際通貨基金IMFの予測によれば、ベネズエラ難民の数は2025年までに840万人に達するとも。ベネズエラでは紛争も、自然災害も起きていないというのに‥‥。

 最近では、米国へ渡ろうとするベネズエラ難民が増えています(米国の大統領選でも大きなテーマとなっていますよね)。

 ベネズエラから米国へは飛行機で飛んでも十数時間。それをバスや徒歩で目指します。その途中のコロンビアとパナマの間には、命を落とす危険がある悪名高いダリエン地峡パンアメリカンハイウェーも通っていない密林・湿地地帯)が横たわっています。

 ここはおよそ10日間にわたって泥道を歩くしかありません。最低限の水と食料を担いで‥‥。 ベネズエラはこう口をそろえます。

難民になった知り合いをもたないベネズエラはだれもいない。ダリエを越えるベネズエラ人もいまや珍しくない」と。

■世界で「最も惨めな国」に陥ったわけ 経済崩壊のきっかけを作ったのは、反米・社会主義を掲げたものの経済政策の失敗を重ねたチャベス前大統領(2013年に死去)と、その後継者のマドゥロ現大統領との見方が一般的です。

 ベネズエラで何が起きたのか、を単純化して説明します。 チャベス前大統領は2000年代、貧困層にお金を回すために、外資系の石油会社を国有化したり、モノの価格を統制(安い価格にした)したりしました。

 一見すると、良さそうな政策に映るかもしれません。ところが結果は、想像を絶する最悪の事態(最大で200万%超のハイパーインフレ)を招いたのです。

 なぜか。

 外資系の石油会社を国有化したところ、新規の油田開拓や経営がうまくいかず、石油生産量は落ちていきました。2015年から2020年ごろまで続いた国際的な石油価格の下落と相まって、石油収入は激減。

 石油はベネズエラの国家収入のおよそ8割を支えていただけに、インパクトは半端ありません。

 モノの価格を統制したら、どうなったのか。
 生産側からすると、モノを作っても儲からなくなりました。国内の産業はつぶれていきます。輸入への依存度は高まるばかり。

 結果として、ベネズエラ経済は「死に体」となってしまったのです。 財政赤字を埋めようと、国営の石油会社(PDVSA)の利益を増税などでより多く吸い上げたら、新規投資どころか、石油設備のメンテナンスに回すお金が不足。

 石油の生産量が減り続けていく悪循環に拍車をかけていきます。

 ちなみにベネズエラは世界最大の石油埋蔵確認量をもつ国。なのにイランから2020年、ガソリンを輸入しました。ガソリン代はいまや、1リットル1~3ドル(150~450円)もします(正規の価格は50セント<約75円>ですが、この価格で手に入れるのは極めて難しい)。

 国家財政が立ち行かなくなったため紙幣をたくさん刷り、その結果起きたのがハイパーインフレです。そこに追い打ちをかけたのが米国の経済制裁(簡単にいうと、米国企業と取引できなくなった)。  
 国民の95%以上が貧困に陥り、国民の4分の1近くが難民として国を去ったのは前述のとおりです。

 2000年代は「反米の旗手」ともてはやされたベネズエラは悲しいことに、2022年の悲惨指数ではワースト2位になっています(2020年は断トツのワースト1位)。

■1日たったの18円で暮らせるのか?

 ご存知ですか。ベネズエラの1カ月の最低賃金がわずか130ボリーバル(3.6ドル=約540円)であることを。30日で割ると1日たったの12セント(約18円)です‥‥。 インフレが凄まじい(モノによっては日本並みか、それ以上の物価)ベネズエラで、これでは到底暮らしていけません。

 しかもこの金額で家族を支えないといけないのです。 世界銀行が定める貧困ラインは「ひとり1日2.15ドル(約320円)」。この数字をかなり大きく下回るベネズエラの暮らしがいかに悲惨か、容易に想像できると思います。

 ベネズエラの主食であるトウモロコシの粉は地方だと1袋(1キロ)1.5~1.7ドル(225~255円)します。5人家族の場合、これは1回の食事でなくなる量。ですがこれだけで月収の半分近くを占めます。驚くことに、月収は2~3回分の食費にしかならないのです。

 困窮する庶民は1日1食に、または食べる量を減らしたり、収入を少しでも増やそうと家で食べ物を作って路上で売ったり、金を掘りに行ったり、ごみを漁って食べ物を探したりしてなんとか糊口を凌いでいます。

 何とも言えない気持ちになるのは、経済崩壊で仕事を失った人たちを行政が最低賃金で何人も雇っていること。雇ってもらう人たちは、わずかな収入でも定期的に欲しいから、自分たちを困窮させた政府に対して「ノー」と言えなくなります。 なんという皮肉。

 ある意味、口封じのやり方です。

■電気が5日間こない生活

 ベネズエラでいま深刻なのは「停電」です。状況は悪化の一途。電力供給を優先的に受ける首都カラカスはともかく、地方だと、電気が1日に8回止まることもざら。ひどいときはノンストップで停電が5日以上続くこともあります。夜は真っ暗だし、暑いし、冷蔵庫のものは腐ってしまいます。

 水の供給も最悪。メンテナンス(お金がかかる)を長年怠ってきたツケから、停電していなくても水道がほぼ出ない場所がほとんど。どうか想像してみてください。水なしで過ごす地獄の日々を。

 ベネズエラ政府がしきりにPRする国民への配給(CLAP)制度も十分に機能していません。コメやトウモロコシ粉、パスタ、豆、砂糖、食用油などのセットを格安(2.4ドル=約360円)で売っていますが、それが買えるのはカラカスで1カ月に1回、地方では3カ月に1回程度。

 また、食料の中に虫が混入していたり‥‥。 かといって政府を批判するとどうなるか。命の危険にさらされます(マドゥロ政権SNSで批判するベネズエラのほとんどは国外に住んでいる人たち)。

 こうしたなかベネズエラでは今年の7月28日、注目の大統領選があります。ですが、反体制派で、国民から絶大な人気を誇るマリア・コリーナ・マチャド元国会議員の出馬は認められず、また選挙管理委員会マドゥロ政権の息がかかっているため、マドゥロ大統領の勝利は確実視されています。

 とはいえ、およそ10年にわたって続くインフレ、電気・水・ガソリンの供給不足で苦しむ国民の多くが政権交代を望んでいるのもまた事実。大統領選での票取りを意識してマドゥロ大統領は最近、こんな発言を繰り返しています。

 「配給に含む食料を増やす。鶏肉も入れる」 「マットレスを持っていない人には眠れるよう配る」 大統領に新たに選出されればこうした約束を果たすとしていますが、実現するかどうかはさておき、あるベネズエラは言います。

 「政府はこんなことをしなくても、最低賃金を“生活できるよう公正な金額”にすればいいだけ。そしたら自分で買える」

国際社会に見捨てられた国

 ベネズエラへの海外からの援助は他国と比べて極端に少ないことも問題です。 世界から見放された国、ベネズエラ

 ここが、パレスチナウクライナミャンマー、シリアなどとの決定的な違いです。

 日本のメディアが取り上げないこともあってか、日本のNGOで、シリアやミャンマーウクライナを支援するところはいくつかあっても、ベネズエラは聞いたことがありません。おそらくganasだけです。

 窮地に追い込まれたベネズエラを助けるプロジェクト、それが『命のスペイン語レッスン』なのです。 といってもお金をただ渡すことはしません。

 ganasが提供するスペイン語講師の仕事をきちっとやることで、彼ら自身が責任をもって稼ぐのです。なぜなら寄付は永続的ではありませんし、ベネズエラにとってはスキルを身につけ、それを使って稼ぐことは長い人生で必須ですから。

 また、たとえ“国ガチャ”“時代ガチャ”に外れたとしても、ベネズエラにもプライドがあります。

■だれも生まれる国を選べない

 『命のスペイン語レッスン』は2020年5月に正式スタートしました。過去11回(合計4年)で延べ806人(リピーターも多数)の社会人・学生に受講していただきました。ありがたいことにベネズエラ講師らの家族の生活は劇的に改善されています。心から感謝を申し上げます。

 下は、彼らから届いた声です。 「父が膀胱結石になって手術が必要になった。『命のスペイン語レッスン』の仕事のおかげで、その費用を捻出できた。父は無事回復したけれど、お金がもしなかったら‥‥」 「家族全員が普通に食事をとれるようになったし、家族の服も買えるようになった」 「病気の夫のために薬を買えるようになった」 「電気の供給を受けられるようになった(壊れていた機器を直した)」 「井戸を掘ることができた(水が手に入るようになった)」 (レッスン料の一部を使って、子どもを対象にしたワークショップも開いています)

 12期(2024年5月8日~10月31日)は3~4人のベネズエラが講師を務め、それに加えて2人が教材を作る担当となる予定です。彼らにはそれぞれ支えないといけない家族がいます。 皆さま、苦境のなかを必死に頑張るベネズエラスペイン語の講師を任せるので、優秀で責任感のある人を厳選しています)を応援していただけませんか。

 絶対に忘れてはいけません。人はだれも生まれる国を選べないことを。悲しいかな、危機はパレスチナウクライナミャンマー、シリアだけではないのです。 世界最悪の経済危機からベネズエラが脱するまで、ganasは『命のスペイン語レッスン』をやめることはありません。

■『命のスペイン語レッスン』の3つのメリット
 1.スペイン語をマンツーマンで好きな時間に学べる! 世界的にメジャーな通信アプリ「WhatsApp」(日本のLINEに相当)を使い、テキストをチャットのように交換。辞書を時々引きながら、ベネズエラ人講師とマンツーマンでコミュニケーションします。

 スペイン語の初心者(ゼロでもOK。英語力も不要)から上級者まで対応します。 スペイン語の基礎、試験(DELEなど)対策、よく使うフレーズ(JICA海外協力隊員として派遣される方にぴったり)、ことわざ、新聞記事の内容、旅行会話、自然な言い回しなどをテキストベースで学べるのはもちろん、スペイン語の文章をリアルタイムでネイティブに添削してもらえます。

 ただビデオ通話は難しいです。理由は、ベネズエラの地方はwifi環境が悪いこと、それに加えて音声も聞き取りにくいからです。 ですがボイスメッセージは交換できます(音声もクリア!)。ボイスメッセージを活用して発音をチェックしてもらったり、聞き取りを練習したり、または簡単な会話を交わすことも可能です。やりとりの履歴も残るので、あとで復習するのも簡単。

2.現地の政治・経済・文化も知れる! 『命のスペイン語レッスン』では、スペイン語を単に学ぶだけでなく、ベネズエラのこと、ラテンアメリカのことを知っていただくことも重視します。

 会話のテーマは、ベネズエラの生活、食、音楽、習慣、大自然、政治(7月28日の大統領選に注目!)、経済(物価など)、経済崩壊による難民のこと、スポーツ(アクーニャ選手を筆頭に一流のメジャーリーガーも多数)、教育(経済崩壊でどうなったのか?)などを想定します。

 ラテンアメリカを旅したことのある方は“旅行者目線”を卒業し、より深く知るきっかけに。JICA海外協力隊の候補生や志望者はスペイン語の練習はもちろん、ラテンアメリカの事情についても聞けます。協力隊OVの方はスペイン語の維持+情報のアップデートにぴったりです。

 首都圏でオフ会(ハンモックやベネズエラ料理を作って食べた体験も)を開く予定です。会社や学校の外に居場所ができるのも嬉しいですよね。

3.頑張るベネズエラを支援できる! 『命のスペイン語レッスン』のレッスン料は、ハイパーインフレに見舞われているため米ドルベネズエラに届けます。皆さまが受講されればされるほど、生活苦に陥ったベネズエラの一家(講師の後ろには家族がいます)を助けることにつながります。

 しかも労働対価として渡すのがミソです。 レッスンについてのご要望があれば遠慮なくおっしゃってください。ベネズエラ人講師の能力向上にもつなげたいと考えています。

 これまでの受講者の皆さまのフィードバックのおかげで「この値段なのに、ほかのスペイン語教室と質は変わらない! いや、それ以上!」と喜ばれるようになりました。

■これまでの受講者の皆さまの声(抜粋)
 「今まで参加したことのある外国語教室の中で一番楽しい。先生のお人柄とプロ意識が質の高いレッスンに結び付いていると思う。ベネズエラのことももっと教えてほしいし、もっと聞くことができるようにがんばりたい」 「スペイン語が初心者の私に、先生は真摯に対応してくれたので、学習意欲が増した。お互いの国の写真を送り、それについての情報や考えを交換できたのは私にとって大変良い刺激になった」

「テキストとボイスメッセージのやりとりなので不安があった。でもボイスメッセージの音はかなりクリア。また写真も受信でき、問題なくレッスンできた。ビデオ通話のようなリアルタイムのコミュニケーションではないけれど、そのぶん、しっかり考える時間がもてるし、先生の質問にも落ち着いて答えられる。私にはこっちのスタイルがあっていた」

「講師の質が高い。間違いをていねいに訂正してくれ、弱点を強化するような宿題を出してくれる。私はwritingを練習したいのでWhatsAppでのやりとりが適している」 「先生の音声の後から、かすかに鳥のさえずりが聞こえてきた。地球の裏側を感じることができた」

「いつもレッスンを楽しみにしている。レッスンの準備がとても凝っていて素晴らしいし、わかりやすい」 「僕は読み書きよりスピーキングに慣れたくて、ボイスメッセージをテキストとあわせて使っている。先生はとてもフレンドリーで、話題や進め方などの要望に柔軟に対応してくれる。文法についても教材や例などを準備してくれているので助かる」

「辞書を使いながらであっても、少し長めの文章が読めるようになったのがうれしかった! 先生から送られてくるベネズエラの食べ物や行事などの写真から、生活の様子を知れるのも楽しい」 「ベネズエラの政治や地理、文化をコンテンツに問題を出してもらえるのが良かった。スペイン語を向上させるだけではなく、ベネズエラについても深く知れる」

ベネズエラのインフレ、ドル取引の現状などを教えてもらった回がベネズエラ経済がよくわかり印象に残った」 「停電があったり、受講者のレッスンスケジュールの変更があったりして先生も調整が大変だと思う。そんななか、いつもきちんとレッスンをしていただいて感謝している」

ボイスメッセージとテキストだけでの語学学習は初めてだったが、意味を調べたり、文章を考えたり、メモを取る時間が自分のペースでとれる」 「試験の前にはそれに応じたレッスン内容にしてくれたり、発表の機会があった時は自分の書いたテキストを見てもらったり、聞いてもらったりできる」

「他のスペイン語教室より、テキストや講師陣の授業計画など、質が高いと感じた」 「仕事が終わった後の夜遅い時間にレッスンを受けているが、ベネズエラの先生はいつも早朝。早起きしてレッスンしていただき、本当にありがとうございます!」

「教材が工夫されている。自分の弱い文法に関するレッスンをリクエストしたら、次のレッスンで教材を準備して取り上げてくれた」 「ベネズエラの文化について学べるのがいい。特にカーニバルのトピックはおもしろかった」 「ベネズエラの薬草や花のお茶の効用を当てるクイズは興味深かった」

■期間 5月8日~10月31日。時間帯は7~12時、19~25時。この中から自由に選んで、予約していただきます。 ■レッスン料(半年分) ・ganasサポーターズクラブのパートナー/サポーター: 2万円(1カ月当たり3333円) ・一般:2万5000円(1カ月当たり4166円) ・ライトプラン(お試しコース):1万5000円(1カ月当たり2500円)

■申し込み方法 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelmVSvCBhrYkXCSFOi8sCBUll-vrNJr1ejwYUgrjJv4ZIvzQ/viewform?usp=sf_link *上のリンクをクリックして手続きしてください。

■主催 NPO法人開発メディア(途上国に特化したメディア「ganas」の運営団体)』  

 
 ベネズエラってかつては産油国として南米でもトップレベルの富裕国だった。

 ところが反米を掲げ共産国家に近づいたチャベス大統領が現れてから風向きが大きく変わった。
 アメリカの石油会社がベネズエラから撤退。

 チャベス大統領としては国有化することで利益搾取を防ぎたかったのだろうが、実際はそのノウハウも経営手腕もなく、どんどん石油産業が落ちぶれていく。  

 チャベス大統領死去の後に登場したのがマドゥロ大統領。  
 マドゥロ大統領チャベス路線を継承し、更なる経済悪化を招いた。

 ある意味チャベス大統領はカリスマ性があったが、マドゥロ大統領はない。  

 国家財政が立ち行かなくなったため紙幣をたくさん刷り、その結果起きたのがハイパーインフレ。それに大きいのが米国からの制裁

 石油産業に依存し、アメリカ企業との取引で生活していた人達が多くいて、国民総貧困のような感じになってしまった。 なんだかんだと言ってアメリカの影響力は大きい。

 アメリカ人には南米は自分達の裏庭だという認識があったので、キューバの時と同じく制裁が厳しい。

 それを打開しようと通貨のボリバールの下落対策として、マドゥロ大統領仮想通貨「ペトロ」を導入した。

 このペトロマドゥロ大統領お墨付きで導入したにもかかわらず、中央銀行デジタル通貨(CBDC)ではなかった。  

 それでも、ボリバル同盟(ALBA)の10カ国のメンバー国にペトロを導入しようと努力したが、海外で取引されることはなかった。  

 ボリバル同盟というのは、反米・左派的な中南米ラテンアメリカ・カリブ)諸国10カ国が加盟している政治・経済協力の国際組織のことだ。

 加盟国は、アンティグア・バーブーダボリビアキューバドミニカ国ニカラグアセントビンセント・グレナディーンベネズエラだが、カリブ海の小国がほとんどでそもそも経済的影響力はないと言えるだろう。

 ボリビアニカラグアに関しては、共に中南米では経済的にはどちらかというと貧困国の部類に入る。  

 そんなボリバル同盟でさえ、相手にされなかったのがベネズエラの仮想通貨「ペトロ」なのだ。

 ベネズエラ国内での使用も奨励されたが、法定通貨としての地位は与えられず、受け入れが義務付けられることはなかったこともあり、普及しなかった。

 そもそもそんな何の保証もないカスコインである「ペトロ」を利用するより、仮想通貨であればビットコインを利用するだろう。 世界的に認知され、エルサルバドルではビットコイン法定通貨に認定もされているしね。

 米ソ冷戦時代キューバソ連が援助する構図となったが、今は世界情勢が違う。

 当時のソ連に取って代わる国があるとすれば中国だろう。

 ただ、中国にとって南米は距離的にも遠く、経済がボロボロになっているベネズエラに手を差し伸べるメリットがあるかという点とアメリカと直接対決するような構図になる危険を冒すかという点だね。  
 ベネズエラの豊富な石油資源を狙うことがあるかもしれないが、今は中国経済も減退してきていてその時期ではないだろう。

 ベネズエラでは7月に総選挙が実施されるが、国民に人気があるマリア・コリーナ・マチャド元国会議員の出馬は認めらないというのはロシアやミャンマーなどと似ているね。

 自分の都合の悪い対抗馬は色々理由をつけて、そもそも出馬させないという戦略だ。
 恐らくマチャド元国会議員が出馬すれば政権はひっくり返るだろう。

 マドゥロ大統領は稀に見る最低の大統領ではあるが、民主主義が浸透していない国では国民は奴隷化してしまい、自分達の意見を表明する機会さえ奪われてしまう。

 そんな生活苦になっているベネズエラを助ける手段としてスペイン語学習を実施しているというニュース。非常に面白いプロジェクトだよね。

 ただ学習効果は微妙だろう。安いのはいいが、実際にスペイン語を勉強しようとする人達にどれだけ効果があるのか。

 特に気になったのが、Wifiの都合でオンライン授業ができないということ。  
 これだと進研ゼミのように添削式の学習形態になる。

 つまり、スペイン語の作文のスキルアップしようとしている人達にとっては効果があるだろう。

 だけど、スペイン語を学んでみようかなと思う人の大半は簡単でもいいから会話ができることではないだろうか。そういう意味では、ちょっと微妙だなと思う。 ボイスメッセージのやり取りがどこまで補えるのか。 

 また、スペイン語って各国で違うこともあるので注意が必要。
 南米ではスペインのように二人称複数のVosotrosを使わないし、国によってよく使用する言葉が違ったりもする。  

 例えば、オレンジのことをペルーではトロンハ、パラグアイではポメロといった具合だ。  

 逆にベネズエラの事をもっと知りたい、自分の知らない別世界の様子を見てみたいという好奇心から興味を持った人には面白いのはないかと思う。その場合はスペイン語学習が副になるけどね。

 でも、色々制限がある条件の中で、なんとかベネズエラで生活苦に苦しむ人を助けようとするプロジェクトには拍手を送りたいね。