台湾・ミャンマーの犯罪闇ルート

中国版特殊詐欺の裏

フィリピンやカンボジアを拠点にしたグループが「闇バイト」と称してメンバーを集め、日本で特殊詐欺を働いていた事件は記憶に新しいが、よく似たケースは台湾でも見られる。現地では、ある女子大生の失踪事件が注目を集めている。  

 3月下旬、台中市内の静宜大学に通うPさん(20)の消息が途絶えた。母親が彼女の携帯電話に連絡するも繋がらず、SNSはどれも閉鎖されていた。ひとり暮らしだった住まいを訪ねるも部屋は空っぽで、新しいスマートフォンの空き箱だけが残されていた……不審に思った母親は警察に通報した。

 まず懸念されたのは、不法移民や密入国をとり仕切る国際犯罪組織「人蛇集團」とのかかわりだった。昨年の夏、カンボジアを舞台に人身売買事件を起こし、台湾社会を動揺させたばかりだったからだ。

 この事件で人蛇集團は「高給」「経験・語学力不問」「渡航費・宿泊先完備」などの言葉を巧みに並べ、インターネット上で求人。騙された若者らを海外バイトと称してカンボジアに送り込んでいた。

 被害者たちはパスポートをとり上げられ、中国人を狙った特殊詐欺に加担させられたという。

 帰国したいと訴えれば、航空券や宿泊先の支払いを要求される。そして仕事ぶりが悪ければ、殴打や電気ショックといった暴行を受け、監禁される。性暴力を振るわれた被害者もいて、使いものにならないと判断されれば、別の組織に“転売”されることもあったという。

 台湾の外交部(日本の外務省に相当)によると、彼らに騙されて海外に出国した台湾人の数は、昨年12月の段階で699人に達し、うち403人が内政部警政署(日本でいう警察庁)などによって救出され、帰国したという。

 しかし闇バイトの被害報告は後を絶たない。
 そんな状況で、Pさんの失踪事件は起きた。

 Pさんの行方を追え!

 3月29日の朝の時点で、自宅を出たPさんの姿は、学校付近の監視カメラに捉えられていた。普段と変わらない黒の上着にリュックサックという軽装で、マクドナルドの前を歩いて通り過ぎていた。ところが、路地に入ったのを最後、消息はぷっつりと途絶えたのだ。

 家族らはFacebookに「尋ね人」を掲載。「SNSを含む連絡手段はすべて絶たれ、住居の監視カメラはみな壊れていた。人蛇集團の関与が排除できない」と訴えた。  警察がスマホGPSを追跡すると、30日8時ごろ、桃園国際空港で電源を切ったことがわかった。

 そして出入国記録から、エバー航空のロンドン行きに搭乗したことも明らかに。しかし、乗り換え地であるはずのタイのバンコクでは、ロンドン行きには搭乗していなかった。

 警察はFacebookのアカウント履歴などから、Pさんの行き先を追った。そして判明した行き先は、先の人身売買事件の舞台であるカンボジアではなく、ミャンマーだった。

 関与が疑われた「元カレ」と「今カレ」  失踪事件をめぐる容疑者として、警察が最初に疑ったのは、Pさんの元カレのLさん(24)だった。ふたりは1年ほど交際していたが、Pさんが消息を絶つ1週間ほど前に別れていた。

 地元紙「自由時報」によると、別れた理由は、Pさんの新たな恋人Uさんの出現だった。  元カレのLさんには、詐欺の前科があった。特殊詐欺に関与し、マネーロンダリング用の口座貸し出し人を軟禁、管理する役割をしていた過去があったのだ。

 警察の調べに、「彼女が出国したがっていたのは知っていたから『騙されるな』と伝えた」と証言したという。元カレのLさんと現在の恋人のUさんは名前を知る程度の面識があったという。Lさんのスマホには「Uさんに会いにいく」というPさんからのメッセージが残されていた。  

 サイバー犯罪被害者を救済する国際NPO団体、全球反詐騙組織(GASO)が行方を追ったところ、Pさんはミャンマー北部に行ったことを突き止めた。

 そして出国前にPさんが、Uさんから仮想通貨テザー(USDT)で2,000ドル(約27万円)を借りていた疑いがわかったことで、疑いの目は元カレから現在の恋人にうつった。Pさんが、ギャンブル系アプリゲームで賭けごとをしていたと思われる会話をしていたことも判明し、借金の返済のためにミャンマーへ働きに出たのではないかとみられた。  

 サイト「三立新聞網」が、Uさんは爽やかイケメン、そして人蛇集團がかかわった詐欺のかつての被害者だったと報じたことで、その疑いはより濃厚になった。彼はかつて組織内で、リクルートを担当させられていたという。

 外交部の救出者リストに名を連ねていたものの、組織から逃げることはできず、取り込まれてしまったようだ。全球反詐騙組織の調査によって、脱出に失敗したUさんは売り飛ばされ、別の組織のなかで働くことになり、これまでに3人の台湾人を騙しミャンマーに連れていったことがわかった。

 Pさんは4人目の被害者の可能性が高い。 新たな被害者の報告と“てん末”  そして4月16日、新たな被害者の報告があった。苗栗県後龍鎮の女性(20)が、ネットで知り合った男に「高給だから」と海外での仕事を誘われ、Pさん同様、ミャンマー北部に連れていかれたことがわかったのだ。

 女性は人蛇集團によって他の組織に売り飛ばされていた。家族は地元議員に助けを求め、現地の救出団体と連携し、女性は無事に救出され、20日に帰国した。女性には持病があり、事態は一刻を争うことから、家族は仲介人に100万元(約460万円)近い額を支払ったといわれる。

 Pさんもこの女性と同じルートをたどったのか。無事に帰ってくることができるのか。成り行きに台湾中の注目が集まったが、思わぬ形で終焉を迎えることとなる。警察はPさんの失踪は人蛇集團との関連はないと断定したのだ。

 救出にあたった全球反詐騙組織のスタッフSammyはこう内実を語った。 「騙されて出国したのは事実だが、彼女はミャンマー北部にいることに満足していた。救出を担う関係者の説得に『Uさんが戻らないなら、私も帰らない』と答えた」

 警察も「彼氏を追ってミャンマーに向かい、自らの意思で帰国を拒んでいる」と判断した。Pさんが成人していることも考慮された。  Pさんは母親との電話で、台湾には帰らずミャンマーに留まることを伝えているという。

 すでにミャンマー北部にある中国人経営者のオフィスで、事務管理スタッフとして働いているという。

 恐ろしいミャンマーの犯罪拠点  

 なんとも肩透かしの結末である。とはいえ、Pさん自身が「彼氏」に騙され、働かされていることに気づいていない可能性も十分ある。彼女の主張をすべて鵜呑みにすることはできない。

 もともとミャンマーには、国境沿いに中国人が仕切るカジノがあった。民政化に移行した際、政権を握ったアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は、犯罪の温床になるとカジノを禁止

 しかし2021年、クーデターを起こした国軍はカジノ業者から莫大な賄賂を受けとり、営業許可を与え、業者は一気に息を吹き返した。その拠点がタイ国境のミャーワディに近いシュエコッコーと北部のラウカイだった。

 国軍は反発する民主派を弾圧するために警察を動員し、現地では警察本来の業務が機能しない状態に陥っている。これを利用し、アジアの犯罪組織がこのカジノエリアに集まることになった。

 シュエコッコーにできた犯罪拠点であるKKパークは完全に無法地帯になり、ドラッグ、人身売買、臓器売買、特殊詐欺などがはびこっている。

 ラウカイもほぼ同じ状態だといわれている。ラウカイは中国国境の街で、中国人を騙す特殊詐欺の拠点でもあるようだ。

 ミャンマーの人々も「あそこは中国人を騙す詐欺グループの拠点。入ったら出ることはできない」と怖れている。

 もともと人蛇集團のような犯罪組織は、中国内で闇バイトを募っていた。しかし新型コロナウイルスの感染が広がり、中国のゼロコロナ政策を貫くなかでリクルートが難しくなった。そこで目を付けたのが台湾人で、集中的に台湾から「かけ子」を集めていく。

 騙された台湾人ミャンマー北部へ連れていかれるのはそのためだ。混乱しているミャンマーでは逮捕される可能性が低いことから、日本の特殊詐欺グループもすでに入り込んでいるという噂もある。対岸の火事ではない。

 フィリピンやカンボジアと違い、ミャンマーの犯罪拠点はドラッグ類が自由だという。騙されて働かされる人の多くが薬物中毒になっている可能性が高く、救出の障害にもなっていることが指摘されている。縁起でもないが「私は大丈夫」と救出を拒むPさんももしかしたら……という懸念は残るのだ。 (林綾子 下川裕治)』

 台湾人中国人詐欺集団の片棒を担がされている闇の実態。
 特殊詐欺って日本だけかと思ったら、こういう犯罪はすぐに世界に広がるんだね。  

 コロナ習近平政権は、ゼロコロナ政策を実施。
 そのため、上海など大都市でも多くの人が自宅で缶詰めになったのは記憶に新しい。

 そのゼロコロナ政策特殊詐欺を働く集団にとっては、かけ子などの人材不足に陥る原因となった。  それで目をつけたのが台湾人らしい。  

 台湾人は一般的な中国語もしゃべれる。コミュニケーションに問題がない。

 日本人の中にはしゃべれると言っても訛りなどでわかるのではと思う人もいるかもしれない。ただ、中国人と言えども、訛りがないわけではない。

 日本では中国語と一括りにしている傾向があるが、北京語と広東語、上海語などは全く違う。一般的な中国語は話せるかもしれないが、台湾人だけでなく中国人間である事なので問題にはならないだろう。

 そしてミャンマーだ。ミャンマーカンボジア中国とも国境を接していて、中国政府ミャンマーカンボジアに多額の投資を行っている。  中国経済と言えるほど、経済的には配下に置かれていると言っていも過言ではないだろう。

 ミャンマー軍がクーデターを起こし、軍事政権に逆戻り。

 アウン・サン・スー・チー女史など民主的政党を弾圧し、世界から非難を浴びている。  

 ミャンマー東南アジアに位置し、ASEANの加盟国の一員だが、その大事な周辺国の会議に出席せずに、他の国から批判が出ているほどだ。

 そんな中、中国は変わらずミャンマーの軍事政権に経済支援を約束している。

 中国は自国もウイグルチベット問題を抱え、内政問題と処理したいから、ミャンマーにも内政に口を出さない姿勢を出している。

 中国アフリカ諸国に対してもそうだが、独裁政権で政治的に問題があっても経済支援をして中国の言うことを聞くような体制を作りあげている。  

 話をミャンマーに戻そう。

 ミャンマー民主化を支持するグループがあって、一定のミャンマー人達が軍事政権に抵抗している。その結果、ミャンマー空爆を繰り返したりして一部では内戦状態だ。

 だからミャンマー軍事政権にとって一番の関心事は、軍事政権にたてつく勢力を根こそぎ取り除くこと。  それで、軍だけでなく警察なども本来の業務をせず、抵抗勢力滅亡に力を注いでいるらしい。  
 その結果、ミャンマーには無法地帯ができているようだね。  まあ、それは驚くに値しない。

 元々ミャンマーは、ゴールデントライアングルと言う麻薬の生産地があって犯罪が蔓延っていた歴史がある。

 ゴールデントライアングルというのは、タイ、ミャンマーラオスの3か国が国境を接するところで、現在でも麻薬であるメタンフェタミンの世界的産地とも言われている。

 またラオスなどでは中国資本のカジノがあり、かつては台湾人も多く利用していた。

 そんな状況だからミャンマーに無法地帯ができて中国人の好き勝手にできると言われてもさほど驚かないのだ。

 中国特殊詐欺集団にとっては、この中国国境のミャンマーの町は非常に都合がいい。

 今中国ではゼロコロナが解消されたとはいえ、外国人が中国に入るのはハードルが高い。ましてや台湾との戦争が起こるのではと言われている現状では、台湾人中国入国となると色々面倒なことが生じるだろう。

 その点、ミャンマーなら問題ない。  騙すにしても、台湾人中国行きと言われれば警戒するだろうけど、ミャンマーならまだ説得しやすいだろう。

 そして恐ろしいのがノルマ。体罰や性暴力もあるらしい。
 出来が悪ければ、他の詐欺集団に売り飛ばすというのも怖い。そういう人間を使い倒そうという組織がまだあるのだ。

 出来が悪くても自分達で騙して連れてくるだけの組織力や資金がなければ、その使い物にならないと判断された輩でも役に立つという事なのだろう。

 考えてみれば、パスポートも取り上げて逃げる手段を奪って、麻薬漬けにすれば、体がボロボロになるまで使えるという判断かもしれない。そして、いよいよダメとなったらポイ捨てされる。

   GPSでここまで突き止めるサイバー技術には驚いたが、そんな努力で事実が明るみに出ても、根本的な解決方法がないのが大きな問題だね。

 今回のニュースの出てきた女子大生はギャンブル系アプリゲームで賭けごとをして仮想通貨で借金をしていたらしい。 仮想通貨というのがみそ。

 一般の借金と違って、仮想通貨の場合は見えにくい。
 しかもビットコインなどのボラリティが大きいものではなく、USドルに連動しているテザーを選んでいるね。

 何より彼がイケメンということに騙されている女子大生の精神が恐ろしい。  恋は盲目というが、せっかく助かるチャンスをミスミス逃して、自分の意志でミャンマーに残るとは・・・。

 家族の思いは辛らつだろう。
 特殊詐欺のリクルーターのイケメンが、ずっとその女子大生の面倒を見るとは思えない。

 リクルーターであれば、当然ノルマを課されるだろう。かけ子になりそうな女子大生を台湾で新たに見つけてミャンマーに連れてくる。

 その時、女子大生Pさんは何を思うのだろうか。

 自分に構ってくれないイケメンに失望したり、新しく来た女性に嫉妬したりするだろうな。
 未成年ではなく成人だったことが大きな仇になりそう。

 自らの意志でミャンマーに残るということは、今後台湾に戻れない可能性が高くなると思う。

 中国人のオフィスで働いているというが、その会社はほぼ間違いなく犯罪集団だろう。Pさんを騙してまで台湾からわざわざミャンマーに連れてきて、まともな会社であるはずがない。

 そうなると、Pさんは自分の意志でミャンマーに残り、犯罪に加担した犯罪者になるだろう。そして、ドラッグに手を出したり、言うことを聞かなくなれば、無理やり薬漬けにされるたり、最終的にはひっそりと始末いうことになる未来が容易に想像できる。

 無法地帯では誰も助けてくれないからね。  
 それにしても元カレも今カレも特殊犯罪に手を染めているなんて、どれだけ男を見る目がないんだろうと思ってしまうな。

 顔など見かけにばかり目を奪われて、問題の本質が見えなくなっているんだろうね。
 ここまでニュースになると、例え台湾に帰れたとしても、台湾の大学にももう戻れなくなりそうだし、今まで育てた親御さんの気持ちを考えると胸が痛いな。