ゾンビ麻薬

ゾンビ麻薬が中国からメキシコへ

メキシコ政府は5日(現地時間)、中国から韓国経由でメキシコに到着したコンテナ船の積荷から「ゾンビ麻薬」とも呼ばれるフェンタニルとみられる物質を確保したと発表した。

 メキシコのオブラドール大統領プエブラ州で行った定例記者会見で「フェンタニルの物質が積まれた中国からの貨物メキシコの港に到着した」「中国からメキシコにフェンタニルが運ばれた証拠になるだろう」と述べた。

 メキシコ海軍のオヘダ総督によると、「燃料樹脂」と書かれた積荷(パッケージ)形態の貨物600個からフェンタニル成分が検出されたという。積荷の重さは1個34-35キロだった。

 オヘダ総督は「これらの積荷を運搬した船は中国の青島を出港し、韓国の釜山を経由したと報告を受けた」と説明した。

 オブラドール大統領は「(フェンタニルが入った)積荷は韓国で取り扱われることはなかった」とも述べ、フェンタニル中国で船積みされたことにも言及した。

    オブラドール大統領は「この問題を解決するため中国の(習近平国家主席に丁重に書簡を送る予定だ」とした上で「中国政府は以前、フェンタニルの輸出規制を求めるわれわれの要請に対し、輸出記録などの証拠を提示するよう求めてきたが、(今回の状況は)われわれの要請の根拠になるだろう」などの考えを示した。

 オブラドール大統領は今年3月22日、習主席に「中国からのフェンタニル船積み量抑制に向けた支援」を要請する趣旨の書簡を送っている。』

   中国から韓国経由でメキシコに到着したコンテナ船の積荷から「ゾンビ麻薬」とも呼ばれるフェンタニルが発見された。

   このフェンタニルとはどういうものか。 強力な鎮痛作用があるもので医療用として使われているが、依存症になったり、過剰摂取をすると死亡するという恐ろしい側面もあるのがフェンタニルだ。

  だから、ゾンビ麻薬というような怖いネーミングをつけられたのだろう。 そのフェンタニル中国から韓国経由でメキシコに届いたというのが、今回の事件だ。

  実はトランプ大統領時代、米中が貿易戦争のように急速に関係が悪化した時から、アメリ中国からのフェンタニル流入に目を光らせていた。

ゾンビ麻薬」とも呼ばれるフェンタニルは、418-49歳の米国人の死亡原因1位で、2021年には米国で薬物の過剰服用で死亡した10万7622人のうち3分の2がフェンタニルによるものだったとされている。

    ホワイトハウスは人工的に製造されたフェンタニルについて、ヘロインやコカインなど従来の麻薬よりも製造や輸送が簡単な上に、致命的でもあるため、「国の安全保障、公共の安全と保健の脅威」と強調している経緯がある。

   しかもそのフェンタニル中国からの不法輸入だったのだ。

   国際間の鎬は、表向きだけでなく裏でも色々と暗躍される。いや、むしろこちらの方がボディーブローのように効いてくることも多いだろう。 中国も昔はアヘン戦争を体験し、麻薬が人をダメにする実態を理解している。

   超大国アメリだが、内側から人々のやる気や能力を奪ってしまえば、今後組みやすくなるというのは、アメリカも中国も理解ししているだろう。

 だからこそ、アメリカ政府が「国の安全保障、公共の安全と保健の脅威」と強調しているのだ。

 こんな状況だからアメリも防御対策を厳しくしているのは容易に想像がつくだろう。  だからこそ、中国は別の手段を使ったのだろうと思う。

 アメリカとメキシコは長距離の国境を接している国である。

 かつてトランプ元大統領は、メキシコ国境にフェンスを立てて、その費用をメキシコに払わせると言って大いに物議を醸しだした。
 まあ、現実的に言って、全国境線にフェンスを作るのは無理な話だ。

 現在はバイデン大統領になって、以前のトランプ大統領のようなメキシコとの関係が悪いわけでもない。  元々アメリカ、カナダ、メキシコの3か国でNAFTAと言う貿易協定を結んでいた間柄である。  
   中国はそこに目を付けたのだろう。  メキシコからアメリカにフェンタニルを持ち込むのが一番手っ取り早いと。  

   カナダなどと比べて、メキシコはそこまでチェックが厳しくない。
 国民性もあるが、楽観的な部分もある。

 また残念ながらメキシコには麻薬組織が幾つも存在して、たびたび殺人事件も起こっている。
 ヘロインなどと違いフェンタニルは輸送しやすいのだから、何とかなると思っていても不思議ではない。

 今回、発覚してしまったが、今まで中国は証拠がないとしらばっくれていたようだ。  そのことは、オブラドール大統領が「中国政府は以前、フェンタニルの輸出規制を求めるわれわれの要請に対し、輸出記録などの証拠を提示するよう求めてきたが、(今回の状況は)われわれの要請の根拠になるだろう」と言っていることでもわかる。

 要するに、メキシコも以前から中国にクレームを入れていたが、証拠がないとはぐらされていたということ。  

   今回、習近平主席が何というか。  

   おそらく、手違いがあったとか言って簡単な謝罪だけでその場を終わらせつつ、裏では中国政府は表に出ずにフェンタニルの輸出を別のルートで引き続き行うのではないかな?

 シナロアなどアメリカ国境に勢力を持つ麻薬組織と手を組めば、メキシコ政府としても相当厄介だ。毎年麻薬組織との抗争でメキシコ人が何人も死んでいるからね。

 ただこれは他人事ではない。  日本に対してやろうと思えば、アメリカやメキシコ以上に簡単にできてしまうだろう。  

 輸送手段も色々あるし、日本は何よりも中国との距離が近い。  こういうニュースを他人事と捉えないように、私達も意識していかなければならない。