宇宙で撮影映画
『【AFP=時事】宇宙で撮影された史上初の映画『挑戦(英題:The Challenge)』が20日、ロシアで公開された。
宇宙での映画撮影をめぐっては、米ハリウッド(Hollywood)でも人気俳優トム・クルーズ(Tom Cruise)さん出演作の計画が発表されている。
ウクライナ紛争でロシアと西側諸国が対立する中、映画公開で先んじたロシアでは喜びの声も聞かれた。
映画は、ロシアの宇宙開発企業ロスコスモス(Roscosmos)とテレビ局の第1チャンネル(Channel One)による共同プロジェクト。
俳優ユリア・ペレシルド(Yulia Peresild)さん(38)演じる外科医が、宇宙遊泳で負傷した宇宙飛行士を救うため国際宇宙ステーション(ISS)に派遣されるというストーリー。
クリム・シペンコ(Klim Shipenko)監督(39)がISSで自ら撮影した30時間に及ぶ映像のうち50分が映画で使われた。
ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は同作について、「われわれが初めて軌道上の宇宙船で映画を撮影した。また一番乗りだ」と語っていた。
ロシア中部の都市ウファ(Ufa)の工場で働く女性(45)はAFPに対し、映画を楽しみにしていると話し、「ロシアはいつも先を行っている」と胸を張った。』
世界で初めて宇宙で撮影された映画がロシアで公開された。
『挑戦(英題:The Challenge)』と名付けられた映画は、ロシアの宇宙開発企業ロスコスモス(Roscosmos)とテレビ局の第1チャンネル(Channel One)による共同プロジェクト。
クリム・シペンコ(Klim Shipenko)監督(39)が女優のユリア・ペレシルドさんと共に12日間宇宙に行き、ISSで自ら撮影したものだ。
確かにこれは凄い。
映画監督と女優が宇宙に行くということは、宇宙飛行士と同様の訓練を受けていないと難しいだろう。その訓練を受けても、宇宙だから何があるかわからない。
かつて、打ち上げ時にスペースシャトルが爆発したという悲劇が実際に起こっていた。
それに、地上と違い、無重力での映画撮影となると、色々な困難があったはずである。
宇宙での自身の体調管理もそうだし、撮影技術も違うから、どのようにどの場面を撮影するのか、色々な工夫があったはずである。
宇宙開発といえば、日本人はアメリカが世界のトップを走っていると思っている節があるが、実は宇宙ステーションなどはロシアや中国が上を行っている面もある。
国際宇宙ステーション(ISS)は日本を含む多国籍共同プロジェクトだが、中国は単独でISSを完成させている。実はロシアもISSを脱退し、単独でISSを作ると発表している。
ただロシアの場合は、そう簡単にいかないかもしれない。
というのもロシアは国土は世界一だが、宇宙へスペースシャトルを打ち上げる時はロシアからではなく、カザフスタンのバイコヌールからだからだ。
ロシアがソ連だった時代は、カザフスタンもソ連だったので1つの国であったが、今は別々の国となっている。 それでもカザフスタンは、ロシアの衛星国として緊密な関係を築いてきたが、最近はちょっと様子が変わってきた。
これまでカザフスタンを含む旧ソ連の中央アジア諸国はロシアの意向に追随してきたが、ロシアがウクライナに侵攻してから風向きが変わってきた。
ウクライナも旧ソ連でかつてはロシアと同じ国で、兄弟と言われるくらい言語や文化的背景も似ていた。 ところがロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻して、戦争を長期化させたのを見て、カザフスタンなどはロシアから距離を取るようになってきている。
トカエフ・カザフスタン大統領は、ウクライナの親ロシア支配地域の“独立”の国家承認を拒んだ。
ロシアが一方的に住民投票をさせ、ウクライナからの独立だと宣言したドネツク、ルガンスク州の独立国としての承認を拒否したのだ。
ロシアの弟分のように従ってきた中央アジア諸国が少しずつ反旗を翻している状況なのだ。 そして、ロシアの宇宙戦略はカザフスタンのバイコヌール宇宙基地を外しては考えられない。
もしかしたら、カザフスタンもロシアの侵攻を恐れてアメリカ寄りに傾くかもしれない。
実際に、ロシアと国境を接して中立を選んでいたフィンランド、スウェーデンもNATO加盟へと方向転換をした。
ロシア国境国はロシアの影響力がある国で固めるというプーチンの思惑とは反対に進んできている。 プーチン大統領がロシアに君臨している限り、カザフスタンなど中央アジアのロシア離れは加速するのではないか。
ロシアの影響力が強すぎると、貿易面でも不都合なことが起こるだろう。 かつてソ連だった時代は、それなりに東側の盟主として技術支援も行えていただろうが、今ではロシア自身、西側の製品や部品がないとロシア国産のものの生産まで影響が出ている状況である。
プーチン大統領は、この史上初のロシアの宇宙撮影映画をロシア人のナショナリズムを呼び起こす手段として使っているのではないかな?
ウクライナでの侵攻がプーチンの思惑通りに進まず、これからウクライナの進撃が予想される中、国民へのナショナリズムを鼓舞して徴兵制度などで兵士をかき集めなければいけない状況だ。
だからこそ、ロシアは史上初のことをやっている凄い国だということをアピールしなければいけないのである。 ただ、宇宙で初めて撮影された映画はちょっと見てみたいかも?
ロシアの総力を挙げて金と労力を費やした映画だ。
映画が面白い、面白くない以前に、この映画『挑戦』からは色々なことが学べそうだ。